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Little fragments

マンガやイベントを中心に、雑文乱文書き散らかし。

艦隊これくしょん 大井メインSS その2

艦隊これくしょん
これの続きです。
 

 

toudo-kougen.hatenablog.com

 

 

 
 私にはこの人が怖くなるときがある。
 いまがまさにそうだ。
 「金剛!46cm砲連射!」
 「バーニングーラーーーブ!!!」
 「仕留めたか?」
 「とりあえず大破したようデース」
 「わかった。北上!魚雷で確実に仕留めてくれ。」
 「わかったよー」
 一見普通の戦闘のやり取りのようであるが、そうではない。目をギラリと光らせて、殺せ、殺せ、とブツブツ呟いている。
 ヘッドセットを片手に、海図を前に。殺せ、殺せと。
 主力戦隊にとってはなれたものなので、特に突っ込みもない。提督もそれを承知の上で呟いているのだろう。しかし、主力戦隊は知らない。破砕した敵艦にバツ印をしてニタリと笑う提督を。完全勝利で終わった戦闘の後に高笑いしている提督を。しかも、その目はいつも虚ろで、焦点は定まらない。はっきり言ってしまうと気味が悪い。
 また、艦娘が被弾したときには無表情となって「大丈夫か」と言うのも気持ちが悪い。声色は気遣うよう作られている。しかし、顔は「武器が壊れたか」程度のものでしかない。
 間違いない。この人は艦娘を己の銃の代替程度にしか捉えていない。
 その横で淡々と戦果をまとめて適宜助言する秘書艦の身にもなってほしい。私はまだ神経の太い方(だと自分では思っている)なのでよいが、しおいちゃんとかよく務まっていると思う。たまには間宮にでも誘って辛くないか聞いてみようかしら。
 「戦闘終了。第一艦隊、敵艦隊撃破しました。」
 「ありがとう。ご苦労様。損傷状況を報告願う。」
 「金剛小破、鈴谷中破、島風小破です。進撃可能かと思われます。」
 「鈴谷の中破について詳細をくれ。」
 「小破に近い中破です。20.3cm砲が1本使用不能になっています。」
 「承知した。今回も深海棲艦の殲滅、感謝する。引き続き進軍をよろしく頼む。」
 提督の顔がいつもの無表情に戻る。そしてほう、とため息をつき言った。
 「艦娘がみな大井みたいに図太ければいいのだがな」
 「どういう意味よ」
 「褒めてるから気にするな」
 「他の艦娘に失礼だわ」
 「通信機は切ったから問題ない」
 「じゃあ聞くけれど、他の娘はなにが違う?」
 「俺が艦娘を兵器扱いすると困った顔をする」
 「当たり前じゃない!もとは普通の女の子よ!?」
 「まぁ、最後まで聞け。大井、お前の場合は―」
―コンコン。
 「入って、どうぞ」
 入ってきたのは夕張と明石だ。大方兵装の相談だろう。私は報告書の作成にとりかかる。兵装の話など、いまは耳に入らないほうがよい。
 夕張や明石が帰った後も私と提督は淡々と仕事を進めた。
 夕方のラッパがなる。出撃、遠征中の艦隊に声をかけてなにもなければ日報と秘書艦ノートに検収印を押して終わりだ。
 「大井」
 「なんですか、提督」
 「ふと気がついたのだが、次の非番が被っているな。たまにはデートでもどうだ。さっきの話の続きもしたいことだし。」
 「北上さんとデートし―」
 「その日は北上非番じゃねぇ」
 「チッ、じゃあ提督の暇潰しに付き合ってあげますか」
 「悪いね。女の子を口説くのが趣味でね」
 「あくまでつきあってあげるだけですよ。余計なことしたら憲兵呼びますから」
 「ハハハ、厳しいなぁ。まぁ、よろしく頼むよ」
 「はい、ではこれ今日の日報と引き継ぎノートです」
 「あいよー。次の非番は俺とデートって書いとくね」
 「やめてください!業務引き継ぎノートですよ!」
 「いいじゃねぇか。付箋で私信やってんだろ」
 知ってたのか。
 「赤城は毎度私信におすすめスイーツ書いてるよな」
 「あれ結構北上さんとのデートの時参考になるんですよ」
 「ほい、じゃあハンコ押したから。飯食いにいっていいぞー。」
 「油性のマジックで、『次の非番、提督とデート♥』って書かないでください!」
 「おお、つい手が滑ってな」
 「私の手が滑って提督を撃たないように気を付けてくださいね♥」
 「お、おう」
 腹立つから、これくらいいっておかなくちゃ。さて、ごはん食べに行こう。
 
――― 
 「なんか大井さん、提督とデートするらしいよ」
 「それで大井さんの機嫌がいいのかー」
 翌々日、食堂ではこんな会話が飛び交っていた。それを聞いた大井は、昨日秘書艦だった足柄をどう事故に見せかけて大破させるかを考えていた。